外観検査AIの種類と比較|ディープラーニング・良品学習の違いと選び方

「外観検査にAIを導入したい」と比較検討を始めると、「どの外観検査AIも同じではないか」という疑問にぶつかる現場担当者は少なくありません。実際には、一口に外観検査AIといっても使われている手法は複数あり、得意な検査・必要な画像・計算環境・運用の手間はそれぞれ大きく異なります。

本記事では、外観検査AIの主な種類を比較し、ディープラーニングと良品学習の違いを整理したうえで、導入前に確認すべき選び方のポイントを解説します。

外観検査における「AI」とは何を指すか

まず前提として、業界での「AI」という言葉の使われ方を整理します。

広義のAIは「人の知覚や知性を人工的に再現するもの」を指すため、ルールベースの画像処理もAIの一形態と捉えることができます。しかし外観検査の現場では、ルールベースとAI(機械学習)は明確に区別されているのが実態です。

ルールベースは人が判定条件を定義する手法、機械学習ベースのAIはデータからパターンを自動的に学習する手法です。この区別を前提に読み進めていただくと、以降の比較が理解しやすくなります。ルールベースとの使い分けは「ルールベース画像処理とは|AI外観検査との違い・比較と置き換えの判断基準」で詳しく解説しています。

外観検査アルゴリズムのポジショニングマップ。ルールベース・機械学習・ディープラーニングの位置関係を示す図

外観検査AIの種類と特徴

機械学習ベースの外観検査AIは、大きく「ディープラーニング系」と「それ以外」に分類できます。さらに、学習方法として「教師あり学習」と「教師なし学習(良品学習)」という軸があります。

外観検査AI手法の比較図。ディープラーニングとHLAC+部分空間法の位置づけ

ディープラーニング

現在、市場に出回る外観検査AIの多くがディープラーニングを採用しています。多層のニューラルネットワークが画像から複雑な特徴を自動抽出するため、微細なテクスチャ欠陥や形状の複雑な判定など、高い表現力を要する検査に強みを持ちます。

一方で、モデルの学習・推論にはGPUを搭載した高性能PCが必要になるケースがほとんどです。また、事前学習済みモデルやフレームワーク(PyTorchなど)の環境構築・保守といった運用負荷も伴います。教師あり学習の場合は、良品画像に加えてNG品画像も一定数必要になります。

HLAC+部分空間法(良品学習)

アダコテックが採用しているHLAC(高次局所自己相関)+部分空間法は、ディープラーニングとは異なるアプローチです。数学的に設計された固定のマスクパターンで画像の局所的な特徴を抽出するため、ニューラルネットワークによる学習を必要としません。

この設計により、GPUを必要とせず汎用CPUで動作します。また良品画像だけで学習できる教師なし(良品学習)方式のため、NG品画像の収集が難しい立ち上げ初期でも検査モデルを構築できます。必要な良品画像の枚数は製品・用途によって異なり、アダコテックの製品では、目視検査補助AI「POKAMIRU」で最小10枚から、検査機に組み込む「AdaInspector」で100〜300枚程度が目安です。

ただし、人の顔認識のような複雑な識別や、高度な意味理解を要する課題への適合性はディープラーニングに劣ります。部品の有無・位置ずれ・表面の異常検知など、「正常からの逸脱を捉える」用途に向いた手法です。

エッジAI(軽量モデル)

近年は、CPUのみで動作し、現場のエッジ端末上で学習から推論まで完結できる製品も登場しています。解ける課題は限定されますが、クラウドやサーバーへの接続が難しい環境や、導入・運用のハードルを最小限にしたい場合には有力な選択肢です。画像検査を初めて導入する現場が、まず小さく始めて効果を確かめる手段としても適しています。目視検査の見落とし対策として使う例は「ポカヨケAIとは|目視検査の見落としを減らす仕組み」で紹介しています。

外観検査AIの比較表

ここまでの内容を、ルールベースの画像処理も含めて一覧で比較します。

比較項目 ルールベース画像処理 ディープラーニング(教師あり) HLAC+部分空間法(良品学習)
判定の作り方 人が判定条件を定義する OK/NGのラベル付き画像から学習 良品画像から「正常」を学習し、逸脱を異常と判定
必要な画像 学習用データは不要(条件設定用の画像は必要) 良品画像+NG品画像 良品画像のみ
計算環境 汎用PC GPU搭載PCが必要なケースがほとんど GPU不要(汎用CPUで動作)
得意な検査 判定条件を数値で明確に定義できる検査 微細なテクスチャ欠陥、複雑な形状判定、欠陥種別の分類 部品の有無・位置ずれ・表面の異常など「いつもと違う」の検知
注意点 条件で表しにくいばらつきのある外観には不向き NG品画像の収集コスト、GPU環境・フレームワークの保守負荷 高度な識別には不向き。良品のばらつきが大きいと過検出が増えやすい

教師あり・教師なしの違いと現場への影響

外観検査AIを比較するうえで、もう一つ重要な軸が「教師あり」か「教師なし」かという学習方式の違いです。

教師あり学習

良品画像とNG品画像の両方を使い、「これはOK」「これはNG」とラベルを付けて学習させる方式です。判定基準を明示的に学習させるため、特定の欠陥種別に対して高い精度を発揮します。

課題は、NG品画像の収集コストです。検査機の立ち上げ直後はNG品が十分に集まっていないケースが多く、また欠陥の種類が多様な製品では、全パターンを網羅するデータ収集に時間と工数がかかります。想定外の欠陥パターンが現れた際には、追加学習が必要になります。

教師なし学習(良品学習)

良品画像だけでモデルを構築し、そこからの統計的な逸脱を異常として検出する方式です。NG品を事前に定義する必要がないため、「どんな欠陥が出るか分からない」製品や工程でも検査モデルを立ち上げられます。

一方で、欠陥の種類を分類したり、特定のNG種別だけを高感度で捉えたりする用途には教師あり学習の方が適しています。良品内のばらつきが大きい製品では、過検出(正常品をNGと判定する)が増えやすい傾向もあります。過検出への対処は「外観検査AIの過検出を減らすには|追加学習の前に確認すること」をご覧ください。

外観検査AIの選び方:4つの問い

外観検査AIの手法を選ぶ際は、以下の4つの問いに答えることで適切な候補を絞り込めます。

  • NG品画像を収集できるか:収集できる場合は教師あり学習の選択肢が広がります。収集が難しい場合は教師なし(良品学習)が前提になります。
  • GPU環境を用意・維持できるか:ディープラーニングの多くはGPU環境が必要です。現場のPC環境や調達・保守コストを踏まえて判断します。
  • 検出したい欠陥の複雑さはどの程度か:微細なテクスチャ異常や高度な形状判定が必要なら、表現力の高いディープラーニングが有利です。部品の有無・位置ずれ・表面の粗さ検知であれば、HLAC系の軽量な手法で対応できるケースが多くあります。
  • 現場担当者が自律的に運用できる必要があるか:製品切り替えのたびにモデルを再構築する場合、フレームワーク環境の知識が不要で現場PCで完結する軽量な手法の方が運用負荷を抑えられます。

よくある質問

外観検査AIにはどんな種類がありますか?

大きくは、ディープラーニングを使うものと、HLAC+部分空間法のようにディープラーニングを使わないものに分かれます。学習方法では、OK/NGのラベル付き画像で学習する「教師あり学習」と、良品画像だけで学習する「教師なし学習(良品学習)」があります。

外観検査AIの学習には何枚の画像が必要ですか?

方式と製品によって異なります。教師あり学習では良品画像に加えてNG品画像も一定数必要です。良品学習では良品画像だけで学習でき、アダコテックの製品ではPOKAMIRUが最小10枚から、AdaInspectorが100〜300枚程度を目安としています。

外観検査AIにGPUは必要ですか?

ディープラーニング系の多くは、学習・推論にGPU搭載PCが必要です。HLAC+部分空間法のようにニューラルネットワークを使わない手法では、GPUを使わず汎用CPUで動作させることができます。

AI外観検査のデメリット・注意点は?

方式ごとに異なります。教師あり学習はNG品画像の収集に時間と工数がかかり、想定外の欠陥が出ると追加学習が必要です。良品学習は欠陥の種類を分類する用途には向かず、良品のばらつきが大きい製品では過検出が増えやすくなります。ディープラーニングはGPU環境やフレームワークの構築・保守の負荷を見込む必要があります。

ルールベースの画像処理とAI、どちらを選ぶべきですか?

判定条件を人が数値で明確に定義できる検査はルールベース、条件で表しにくいばらつきのある外観を判定したい場合はAIが候補になります。詳しくは「ルールベース画像処理とは|AI外観検査との違い・比較と置き換えの判断基準」で解説しています。

アダコテックのアプローチ

アダコテックは、HLAC+部分空間法を核とした外観検査AIを提供しています。GPU不要・良品画像のみで学習可能という特性は、「導入したいが環境面・データ面でハードルがある」という現場の課題に対して、技術的に異なるアプローチで応えるものです。

一方で、高い表現力が必要な課題や、欠陥種別の分類を主目的とする用途では、ディープラーニングベースの手法が適している場合もあります。重要なのは手法の優劣ではなく、検査課題の性質と現場の運用環境に合った選択をすることです。

アダコテックでは、検査機に組み込んで良品のばらつきから異常を自動検出する「AdaInspector」、少量生産・多品種切替の現場で目視検査のうっかりミスを防ぐ「POKAMIRU」、欠陥の種類や等級まで判別する「Shiwaketter」など、検査の目的に合わせた外観検査AIを提供しています。

どの手法が自社の課題に合うか判断に迷う場合は、お問い合わせフォームからお気軽にご相談ください。検査課題の整理から手法選定まで、現場の状況を踏まえてお手伝いします。各製品の概要は、この下の製品一覧からご覧いただけます。