HLACとは|Deep Learningと違う外観検査AIの原理
外観検査の自動化を検討する中で、「HLAC」という技術名を目にしたものの、Deep Learningとどう違うのか、実際にどう検査に使われるのかがつかみにくいという声をよく聞きます。この記事では、HLACの原理から外観検査への応用手順、動画データへの拡張技術までを整理します。
HLAC(高次局所自己相関)とは何か
HLAC(Higher-order Local AutoCorrelation:高次局所自己相関)は、国立研究開発法人産業技術総合研究所(産総研)で発明された、画像の解析・認識に用いられる特徴抽出法です。
仕組みとしては、画像内の各ピクセルを中心とした3×3の小領域(マスクパターン)を設定し、その領域内でのピクセル同士の輝度の相関関係を計算します。1次のHLACでは中心ピクセルと隣接ピクセルの相関を、高次のHLACではより離れた複数ピクセル間の相関を計算することで、単純な明暗だけでなく複雑なパターンやテクスチャーの特徴を捉えられる点が特徴です。
計算自体は積和演算のみで完結するため、市販のPCでも高速に処理できます。
HLACが外観検査に向いている理由
HLACには、Deep Learningを用いた画像認識とは異なるいくつかの技術的特性があります。
- 積和演算ベースの軽量な計算:GPUなどの大規模な計算資源を前提とせず、汎用PCでの処理が可能
- 位置不変性:認識対象がどこにあっても検出できるため、対象物を切り出す前処理(セグメンテーション)が不要
- 加法性:対象が複数ある場合、それぞれの特徴ベクトルの和として扱える
- 少量データでの学習:良品画像を中心に学習するアプローチのため、不良品データを大量に集めにくい現場でもモデル構築を進めやすい
これらは万能な優位性というより、「どのような検査対象・データ状況に向いているか」を判断するための技術的な特性として捉えるのが実務的です。
HLACによる異常検知の仕組み(5ステップ)
HLACを使った外観検査は、大きく分けて以下の5ステップで構成されます。
1. 画像の分割
良品画像を100枚程度集め、特徴を表現しやすいサイズに分割します。分割された1つ1つの画像を「パッチ」と呼びます。

2. 特徴抽出
各パッチについて、3×3のマスクパターン(2値HLACの場合25種類)を用いてHLAC特徴量を計算し、25次元の特徴空間にマッピングします。この空間上では、似た特徴を持つ画像同士が近い座標に配置されます。

3. 正常部分空間の作成
25次元の特徴量から主成分分析により余分な次元を削減し、良品の特徴をより的確に表現できる「正常部分空間」を作成します。この空間との距離を測ることで、異常検知が可能になります。

4. 異常値の算出とヒートマップ化
パッチごとに正常部分空間からの直交距離を算出し、これを異常値とします。異常値に応じた色でパッチを塗り分けることで、画像内のどこに欠陥があるかをヒートマップとして可視化できます。

5. しきい値によるPass/Fail判定
異常値にしきい値を設定し、しきい値以内であれば「良品(Pass)」、超えていれば「不良品(Fail)」と判定します。どの特徴量が良品と異なることで異常と判定されたかを統計的に確認できるため、しきい値の調整や検査基準の見直しにも活用できます。

動画データへの応用:CHLACとは
HLACを動画(時系列データ)に応用した技術が、CHLAC(Cubic Higher-order Local Auto Correlation:立体高次局所自己相関)です。CHLACは、テロ対策の一環として実施された「無人監視・認識技術」に関する国際コンテストにおいて、MITをはじめとする海外大学を抑え、産総研の技術が世界1位となった実績を持ちます。

静止画への応用時と異なり、動画の場合はパッチに分割せず、1フレームごとに異常値を計算します。フレーム単位で正常部分空間からの距離を異常値として時系列にモニタリングし、しきい値を超えた時点で異常としてアラートを出す仕組みです。


まとめ|HLACが解決できる検査課題
HLACは、Deep Learningとは異なるアプローチで、少量の良品画像から異常検知モデルを構築できる技術です。計算の軽さ、位置不変性、判定根拠の解釈しやすさといった特性から、目視検査からの置き換えを検討する現場や、不良品サンプルの収集が難しい現場との相性を確認する価値があります。
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