株式会社樋口電子

前回のインタビューでは、POKAMIRUの導入背景や少量多品種生産における検査課題をお聴きしました。今回は、実際の運用が進む中でどのような活用が広がっているのか、専務取締役 樋口真士様に改めてお話を伺いました。

データが、信頼になる


― 最近、POKAMIRUの使い方に変化はありましたか?
使うのが当たり前になってきましたね。お客様からデータを求められる場面が増えてきて、「データをお出しできますよ」と言えることが信頼につながって、安心して仕事を任せてもらえるようになってきました。
特に多いのが、「人の手作業の部分だけピックアップして記録してほしい」という要望です。不良が起きやすい工程だからこそ、きちんと記録として残したい、というニーズは確かにありますよね。

 
 

マスキング工程で、大活躍

― マスキング工程での活用が進んでいるとのことですが、具体的にはどんな場面ですか?


最近、両面にチップ部品やコネクターが実装された基板が増えています。そういった基板に後からはんだ付けする場合、裏面の部品が少なくてもしっかりマスキングしないといけないんです。はんだ付け作業で部品とチップが近ければ、熱でやられてしまうこともあって。特に複雑なマスキングが必要な品種では、本当に助かっています。

 

― 少量多品種の製品にも使っていますか?
はい。今一番よく使っているのは、月30枚ずつ入ってくる品種です。一度モデルを作ってしまえば、同じ品種が来たときにそのまま使えます。マスキング検査なら良品が1枚あれば始められるので、準備の手間もほとんどかかりません。

― 現場の方の反応はいかがですか?
マスキングをする人の精神的な負担がずいぶん軽くなりましたね。
以前は、マスキングを剥がす時に「あれ、ここ部品がない」「チップが落ちてる」といったことが実際にあって、そのたびにがっかりしていたんです。

― もし不良が見つかった場合は、どう対応されるんですか?
まずお客様に報告して、原因がマスキング忘れとなれば再発防止策を求められます。
「教育します」「標準書を直します」「ダブルチェックします」と、正直手段は限られているんですよね。
でも画像が残っていると、異常を事前に検出できる可能性がぐっと高まります。記録があることで、原因の特定もしやすくなります。

量産品には、エビデンスとして

― 組み付けミスの検出への活用はどうですか?
そこは今のところ、記録・履歴を残すという方向で使っています。
毎月生産している量産品は、人の目視検査を主体にしつつ、写真を撮って記録していくスタイルです。

― なぜその使い方が合っていると判断されたんですか?
全国に出回るような量産品で不良が出ると、現地対応のコストがかかります。ロットを絞れれば対象を抑えられますが、年間1,000〜2,000台規模になると、記録を残しておく意味はとても大きい。
今はそこに一番価値を感じています。

もっと使いやすくなったら、もっと試したくなる

― 製品に対して、こうなったら嬉しいという要望はありますか?
今ははんだ付けの後に使っていますが、できればはんだ付けの前に検査したいんです。そこで不良を見つけて直せれば、修正の工数が減るので。ただ今はキャリア(基板を固定して搬送するための治具)ごと、はんだ槽に流しているので、一枚ずつ撮ろうとすると基板を置き換える必要があって部品が浮いてしまうリスクがあります。キャリアのまま撮れるようになったら理想ですね。
あとはボタンの配置や、押した時の応答スピードも現場では結構大事で。もっとテンポよくバンバン撮れる感じになると、さらに使いやすくなります。

― 学習・推論の高速化は今後アップデート予定です。処理時間と学習時間を大幅に短縮できる見込みです。
それは嬉しいですね。使いやすくなれば、あれもこれも試してみようという気になりますから。

触れば、発想が変わる

― マスキングへの活用は、現場から自然に広がっていったんですか?
そうなんです。みんな「めんどくさいからとりあえずやってみよう」みたいなノリで(笑)。設定が楽なのが大きいと思います。基板が緑でマスキングテープが黄色だから色の差がはっきりしていて、検出もしやすいんですよね。

― 導入前と後で、見え方が変わる感覚はありますか?
めちゃくちゃあります。導入する前は「これができないと使えない」という目で見てしまうんですけど、実際に使い始めると「これもこうしたらいけるんじゃないか」って発想に変わっていくんです。使い倒そう、という気持ちになります。
固定されたカメラだと「この工程には使えてもこの製品には使えない」となりやすいんですよね。自由に動かせるボックス型というのは、現場での柔軟さがまったく違います。

画像検査を、もっと身近に


― 画像検査の導入ハードルについて、どう感じていますか?
「精微にやらないといけない」というイメージが先行しすぎていて、最初のハードルが高すぎると思われがちなんです。数千万円かかるなら「大企業にしかできない」ってなってしまう。
でも少量多品種でも、合理的に使えるケースはたくさんあります。
触ってみれば絶対に「あれもできるんじゃ、これもできるんじゃ」ってなりますよ。AIを実際に触ってみたら手放せなくなるのと同じで、画像検査もそれだと思います。
POKAMIRUはそのハードルを下げてくれているのが、正直ありがたいですね。