アダコテック、モノづくりの検査・検品自動化するSaaSシステム 「AdaInspector Cloud(仮)」のクローズドβ版の提供を開始~検査・検品の自動化システムを自社内で構築するノーコードAI開発ツール~

「HLAC(エイチラック)」特徴抽出法※1を用いた画像解析によりモノづくりの検査・検品の自動化を促進する株式会社アダコテック(本社:東京都千代田区、代表取締役:河邑 亮太、以下、アダコテック)は、2020年12月28日(月)より、プログラミング不要でモノづくりの現場の検査・検品を自動化するSaaSシステム「AdaInspector Cloud(仮)」(アダインスペクター クラウド)のクローズドβ版※2の提供を開始いたしましたので、お知らせいたします。

 アダコテックは、産業技術総合研究所(産総研)が開発した「HLAC(エイチラック)」特徴抽出法用いた画像解析技術を軸に、従来よりも効率的な異常検知を可能とするソフトウェアを提供しているテクノロジーカンパニーです。本技術は、少ないデータ量で高精度の解析ができるほか、異常として学習したものを検出するのではなく「正常を逸脱したものを検出する」モデルのため、前例のないようケースも含めてほぼ100%異常を検出することが可能です。また、積和演算のみで計算可能なシンプルな方式であるため計算処理の負担が小さく、ノートパソコンのような汎用PCでもミリ秒オーダーの検査処理を実現・運用できるのも強みです。これまでの実績としては、大手自動車部品メーカーをはじめとする製造業の実ラインに検査・検品の画像解析ソリューションを複数社に導入済で、自動車業界を中心に技術の実用を進めています。

 これまで、アダコテックは、モノづくりの現場の検査・検品を自動化すること目的に、各社のニーズにあわせカスタマイズしたシステムをオンプレミスで構築し提供してまいりました。製造業界に求められる品質要件は大変厳しく、モノづくりの現場では、不良品の見落としをなくすために厳格な検査基準のもと、高度な検査・検品が実施されています。そのため、AIによる画像解析を用いて検査・検品の自動化を実現するには、熟練したエンジニアニアリングのナレッジと技術が必要となります。一方で、国内のエンジニア不足は深刻化しており、製造業界で高まる検査・検品の自動化ニーズに広く対応するにためには、オンプレミスでのシステム提供に留まらず、AIのコンサルテーションやプログラミングの必要なく自社内でのシステム構築が可能なクラウドサービスの提供が不可欠です。さらに、より多くのモノづくりの現場で検査・検品の自動化を実現するには、導入コストおよび運用管理の負荷の低いシステムの提供が必要です。アダコテックは、これらの課題を解決しモノづくりの現場の生産性向上に資するサービスを提供すべく、SaaSシステム「AdaInspector Cloud(仮)」の開発を進めており、正式版のローンチに先駆け、2020年12月28日(月)にクローズドβ版の提供を開始いたしました。

 「AdaInspector Cloud(仮)」は、画像解析による検査・検品の自動化システムの構築および実装を一気通貫で提供するSaaSシステムです。クラウド上で自動で学習しシステムを構築するサービスと製造現場で動作する検査アプリケーションとで構成され、2021年夏頃を目処にローンチする予定です。通常、製造業の検査・検品を、AIを活用した画像解析により自動化する場合には、検査対象となる製品画像の前処理の最適化、複数パターンの組合せによる学習手法の最適化処理、性能と処理速度を実現するためのプログラミング能力等が開発者には求められます。また、構築したシステムの検査精度を最大化するためにパラメータ※3の調整や精度の評価も不可欠であり、実用化に至るまでこれらの作業を試行錯誤的に繰り返す必要があり、エンジニアの熟練した技術やナレッジが要されます。「AdaInspector Cloud(仮)」は、難易度の高い検査・検品の自動化システムの構築と製造現場での実行を、 プログラミングが不要かつ簡潔かつ直感的な操作で実現するシステムです。AIや画像解析領域のエンジニアリングを専門としていない方でも、検査・検品の自動化システムを自社内で構築し、また、現場での動作を可能とすることを目指し開発を進めています。

 この度、正式版に先駆け提供を開始したクローズドβ版の「AdaInspector Cloud(仮)」では、主に、ユーザー側で用意した自社の製品画像を利用し学習済みモデル※4を生成する機能と、生成した学習済みモデルの精度を評価する機能を提供いたします。検査・検品の対象製品の画像データを100枚程度アップロードするのみで、モデルの学習およびテスト時に利用するデータセット※5が完成します。また、数ステップの設定のみで学習を実行し検査・検品を自動化するためのモデルを生成する「自動学習機能」、「自動学習機能」で作成した学習済みモデルの検査精度を定量的に示す「モデルのテスト機能」を提供します。

 アダコテックは、β版のユーザーから得られたフィードバックなどを参考に、2021年の正式版のローンチに向け、プロダクトの改善を図り利便性の向上に努めます。また検品・検査の自動化の普及を通し、製造業界の進化と革新をサポートする事業の展開を目指します。

※1  HLAC特徴抽出法:画像の解析や認識等に用いられる認識精度に優れた汎用かつ高速な特徴抽出法。検査対象の形状や大きさを計算する際、複雑な処理を行うDeep Learning技術とは対照的に、画素値(各画素の色の濃淡や明るさを表す値)を積和演算するのみで算出可能なので、市販PCで瞬時に計算できる。また、位置不変性(認識対象の位置が変わっていても同じものだと認識できること)及び、加法性(対象が2つある場合にそれぞれの特徴の和が全体の特徴となること)という特性から、画像のなかで同じものを表す領域の境界線を見つける必要がないことや(セグメンテーションフリー)、画像に複数の異常が発生した場合も個別に特徴を認識することができるといった、画像認識にとって好ましい性質を備えた特徴抽出法である。

※2「AdaInspector Cloud(仮)」クローズドβ版は限定的に提供を行っているため現時点ではユーザーの一般募集は行っておりません

※3 パラメータとは、「変数」と訳され、機械学習や深層学習を実行する際に学習のパフォーマンスや精度を高めるために、アルゴリズムに対し調整する値である

※4学習済みモデルとは、アルゴリズムを使ってある特定の分野に絞りデータを解析することで、その中に規則性や関係性を見つけ出す「学習」を通し作られた具体的な計算式/計算方法を指す

※5データセットとは、AIを構築する過程でのモデルの学習やテストなどを行う際等に使用するプログラムで処理されるデータの集合体を指す